証人尋問を終えて3

さらに続きを書いてみる。今日は三つのテーマを出してみたい。一つはこちらからみた裁判官の印象、一つは被告医師が正当化したRapid Neuroleptizationという治療法、措置入院や医療保護入院の妥当性についてである。


サピオの精神医療特集第二回が出版されました。ぜひ皆さん読んでください。
http://www.zassi.net/mag_index.php?id=55
民事の裁判では三人の裁判官の前で証人尋問を受ける。宣誓して原告弁護士から質問を受けその後被告弁護士から質問を受けるという順番だ。内容は大体これまで書いてきたとおりだが、まだまだ日本中の精神医療とつなげて書かねばならないことが山ほどある。しかしその前に裁判官の動向につき少し感想を述べてみる。

はっきり一言でいえば、裁判官が証人尋問や弁護質問を聞いての顔の印象は、「イヤ、わかんねー」である。それはそうであろう。多くの精神科権威たちが精神医療の正当性を訴え、かつ精神医療は特別であるかのような社会風潮がある中、一医師が多剤療法の悪を述べたところで、すんなりそうですねというわけにはいくまい。科学的議論をしようにも、正反対の仮説が並べられるのだから素人には判断が難しい。しかも裁判は証拠をもとに進められるものだから、推論ではなかなか結論を出しにくい。むしろ私がいっていることが推論にあたるし、検査で異常な中毒所見などが示されない以上、見識ある裁判官でないとなかなか結論は出しにくいと思う。

医療裁判において結論を出しにくかったり、医療的意見が割れる時、有名大学教授などに鑑定してもらうことがある。しかし精神医療の場合これほど有利なことはないのが、このブログを読んでいる方ならお分かりになると思う。精神薬を最も推奨している教授たちにこのケースをどこまで否定できるというのか。自分達の病院も数多く似たようなケースを輩出してきているのだから、認めてしまったらいつ被告に立たされるかわかったものではないと発想するだろう。この意味においても精神医療裁判は難しい。

話は変わって、被告医師は公開尋問の中で多剤大量療法の正当性について、Rapid Neuroleptizationという言葉を使った。これは1970年代によく用いられたコンクリート固めのやり方である。その後多くの論文によって大量療法について検証がなされ、抗精神病薬の治療効果は chlorpromazine 換算 500mg / 日 で頭打ちとなり、それ以上の増薬は副作用のリスクを増大させると結論付けられた(by臨床精神薬理)。にもかかわらず今更こんな言葉を持ち出すとは滑稽だが、これでさえ一旦物々しく言われてしまったら、裁判官の心証を変えるのは一苦労になる。原告弁護士にしてみれば牛歩戦術に対応しているような気分だろうか?

このケースは研修医が行った医療行為であることを述べた。研修医であるということは翻せば精神保健指定医ではないということである。その指定医でない医師が家族に会い医療保護入院を決定している。これは立派な違法行為だが、相手の弁護士は当然このことには触れないし、被告医師は現場の過酷さを訴え逃げを図ろうとする。しかしこの入院決定については現場の忙しさで逃げていいものではない。外科医が少ないからといって、経験のない医師が難しい手術をやっていいわけはあるか?ただでさえこんな治療をやる研修医なのである。外来でも強制入院判断でもまっとうな判断が下せるはずはなかろう。

残念ながらこのような医療保護入院、措置入院の違法性をあげるときりがなくなる。外来で医師に逆らい注射を打たれ、それで措置入院になったというケースもある。家族が財産を没収するために高齢者を医療保護入院にするケースもある。医療保護入院の説明をされずに入院したら保護室に閉じ込められるケースもある。このような行為は日本中の精神科医で行われているのである。大学病院もその司令塔にすぎず、精神科というのはそういう世界だ。

この裁判における原告側の意見書作成医師はすべて内科医である。精神科医はどんな結果になろうと、決して精神医療を批判するものに味方したりはしない。精神科医だけでなく家族会なども、決して自分達の意見が間違っているなどとは言わない。この業界にかかわるもので薬を飲んでいない人間こそ、みな狂信者にすぎぬということである。
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No title

はじめまして
donjinanと申します

こころのホタルさんのブログで先生のブログを知り、
いつも拝読させていただいております

「外来で医師に逆らい注射を打たれての入院」、
私は 正しくこれでした
また、お金を吸い取られていた患者さんと同室でしたし、
他にも 見たものは信じられないことばかりでした

体験が何か役に立たないかと思いブログを始めましたが、
あまりに奥が深いので驚きました
精神科医、病院、製薬会社に厚労省、
全てに呆れと怒りで頭はいっぱいです

自分なりに戦っておりますが、先生の記事を読んでいると、
ショックもありますが、勇気がでてきます
先生はじめ、共鳴なさっている医療関係者の方々によって、
精神科医療がこれから変わることを願っております

不躾で無礼なこと書いてしまいましたこと、 お許しください

時節柄どうぞご自愛ください

No title

はじめまして。どんどん真実を世に発信してください。応援しています。
ブログアドレスをよろしければ教えてください。よろしくお願いします。

No title

どうして多剤大量療法を肯定できるのだろうか。
自分たちは飲む勇気があるのだろうか。
今の精神医療はすべてがおかしい。

お礼

先生  おはようございます

昨日は コメントの返事だけでなく、
ブログまで見ていただき  ありがとうございました

URLを記載せず 失礼しました


カルテの写しが手もとに着き次第、 
真実の詳細を書いていこうと考えております
お忙しいとは存じますが、
お手すきの時にでも読んでいただければ幸いです

今後ともどうぞよろしくお願いします

No title

お世話になります。
失礼ながらリンクさせていただきました。

No title

おはようございます  donjinanです。
先日は貴重なご意見ありがとうございました。

昨日Z病院よりカルテの写しをもらってきましたが、ますます頭は混乱してしまいました。
治りたい一心で、先生が「鬼」と呼んだ医師を信じ、まさしくやられてしまった、
先生がおっしゃるように、自分の甘さを痛感しておます。
治療にあたっての認識不足、もっと慎重に取り組まなければいけなかったことは事実で、
性格も含め自分にも責任があることを 今一度反省しております。
とにかく、カルテをよく見てみます。
先生が教えてくださった現実を前提に読むことができますので、
今までとは違う解釈のしかたができると思います。
ブログには少しずつ書いていきますので 読んでいただければ幸いです。
今後ともどうぞよろしくお願いします。

No title

ぜひ読ませていただいて、医療側のドロドロした視点からお返事できればと思います。。
プロフィール

Author:キチガイ医
平成25年4月よりTokyo DDCとNPO法人薬害研究センターを設立、平成28年1月からはうつ民のセレクトショップや無料メルマガもやってます(詳しくはリンクをご覧ください)。薬の減薬や断薬、支援施設運営や、執筆や啓蒙活動を通して、自分の素人的意見を発信していければと思います。当ブログはリンクフリーですが、リンクするときは一声おかけください。

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