証人尋問を終えて2

前回の続きをもう少し詳しく書いてみよう。

ここで違う話だが最初に付け加える事実がある。患者さんはずっと高熱があり抗生剤を飲んでいた。途中からは点滴も追加された。実はその飲んでいた抗生剤はクラリスロマイシン系の薬なのだ。この相互作用は皆さんネットで確認してほしい。一言でいえばCYP3A4を阻害して精神薬が代謝されにくくなるわけ。つまりCP換算6000というのはみかけの話で、実際は6000以上という計算になる。それを前提に全体をみてほしい。

まず呼吸抑制。添付文書さえ無視して呼吸抑制がないと言い張るのは、もはや筆舌に尽くしがたいが、彼らの論理をもう少し解析してみる。これには入院経過を少し理解する必要がある。実は心肺停止になる前の日、投与されていた精神薬は約半日投与されなかった。何故投与されなかったかはカルテ上不明である。そしてその半日後に再びCP6000近い精神薬投与が行われた。知識がある人、飲んだことがある人、たとえ家族であっても、この一気にやめてまた一気に投与する危険性はよく理解できると思う。しかし弁護側はこの経過をまさに逆手に取ったのである。

つまりどういうことかというと、入院当初に多量の投与をされていたが、途中で投与されていないので、血中濃度は下がっているはずである=副作用のリスクは下がるはずであるとする理屈である。また入院当初で呼吸抑制がないのに(実際はそうではない)、それより血中濃度が下がった状態で死ぬことはあり得ない、という理屈を展開したのである。この「血中濃度が前より低いかもしれない」という点については、証拠はないものの素人的に間違っていないかもしれない。事実私も、その点については間違っているという反論はしなかった。

しかし彼らはそもそもこの多量投与自体が、呼吸抑制をきたすということ自体を認めていないし、看護記録に書いてある呼吸抑制の症状や所見を、「寝ているだけだ」とか「眠っていると書いてある」などと主張した。診察していないから痛み刺激に反応するかどうかさえ分からないし無呼吸も無視している。そのことをここでもまた逆利用している。

ここからは個人的な意見でどんな論文も存在しないと思うが(なのにその論文を出せと彼らは求めるが)、一気にこれだけ断薬して血中濃度が下がっているところに、また急激にあげたりするとその方が危険なのではないか?というのは間違いなのだろうか。血中濃度というのはどんな多剤投薬でも、最後はプラトーになっていくと思うのだが、急激な変化のほうが脳も体もついていけないと、素朴に思うのである。誰かこれを薬理学的に完全に証明してもらうととても助かるのだが・・・

私のショボイ知識では、たしか有効血中濃度というものがあったと記憶する。そして飲んだ量がいつも同じ血中濃度を呈するとは限らない。また一定以上の濃度はすべて中毒濃度だし、中毒濃度になると副作用出現はいつでも起こりうるのではないかと推測するのだが、間違っているのだろうか?また多剤投薬では単剤と違って、血中濃度の測定式などが適応できないのではないかと思うから、濃度推測自体も難しいし、血中濃度が中毒域でも「この数字なら何パーセントの副作用出現率」などと断言できる根拠は、果たして臨床薬理学にも存在するのだろうか?と思う。この多剤投薬ならすぐにまた中毒域に入るだろうが、そのことを「証明」できない。無理だと思ったから意見書に書かなかったのだが、もっと知っている人がいたら是非教えてほしいものである。

もう一つ今回は悪性症候群を挙げよう。このケースには原因不明の発熱、CPKの上昇、多量の精神薬物投与という条件が整っているが、錐体外路症状の記載がなかったので私は悪性症候群と断定しなかった。なにしろ記載が全くないので意見書も書きようがないのだ。ところが後日、患者さんや家族の証言により眼球上転があったのが確認された。これはゆゆしき事態のはずである。精神科医として最も基本である、悪性症候群を見逃すという愚行を犯していたことになる。初期治療からすべて間違っていることが示されているのだ。

もちろん残念ながら被告は一切そのことを認めていない。いや、もし認めていたとしても、死因ではないから関係ないという姿勢といったほうがいいだろうか・・・
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No title

精神科では医師が患者のことをどのようにでも解釈でき、また記載する段階でもどのようにでも記載できる自由自在の世界なんです。昔、主治医がぶっちゃけた話としてそう言ってましたし、また、それを悪用する医師がいるんです。だから誤診の隠蔽など簡単な話なんです。ある意味、無敵の存在だと思います。

No title

誰にも証明できないことを求める。
ある意味最強!

No title

クラリスのCYP3A4の阻害作用ですが、阻害の中でも高度阻害薬であることが判りました。

なんと、5倍から8倍です。

No title

その場合でも、CP換算値を仮計算できるような式はありませんか?致死量に到達すると権威によって証明することが彼らには必要ですが、そこが五月蠅いんですよね。

No title

所謂キチガイって表現は、内海先生側ではなく。今回の被告医師の発言や対応にあたりますよね。

矛盾が多く。医療を熱心に信じてきた私に取っては恐ろしい事件でしかないです。全てがそうという考えではなく。人々には健康に対して最大限の自己管理と強い意識必要なんだなって思いました。
プロフィール

キチガイ医

Author:キチガイ医
平成25年4月よりTokyo DDCとNPO法人薬害研究センターを設立、平成28年1月からはうつ民のセレクトショップや無料メルマガもやってます(詳しくはリンクをご覧ください)。薬の減薬や断薬、支援施設運営や、執筆や啓蒙活動を通して、自分の素人的意見を発信していければと思います。当ブログはリンクフリーですが、リンクするときは一声おかけください。

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