救急医療の問題について

この前も受け入れ拒否から亡くなった事例があった。この問題は妊婦も含めてずっと前から続いているが、全く改善の兆しがない。改善しない理由はいろいろな理由があるのだが、どのマスメディアを見てもまともな記事を見かけないので、傲慢ながらあえて医師目線でこの問題について検討してみることにする。

救急問題についてはネット上に転がっているし、やはりネット上の記事の方がそれぞれの立場はあるものの、真理に近いと思う。

医師の数が少ない
医療従事者が少ない
労働過多に対して給与が安すぎる
救急車がタクシー代わりである現状に辟易
コンビニ気分で救急に受診する
救急に受診しても診療費を支払わない人が多い
偏向報道のマスコミ
モンスターペイシェントの増加

他にも理由はあるだろうが、これらに対して救急医の我慢が限界に達し、あらゆる病院から救急がなくなり、救急医自体も消えた。このこと自体は別に間違いではないと思う。

しかし対策として、例えば医師の数を増やせとか、コメディカルを増やせとか、給与や保険点数を上げろとか、救急病院を充実しろとかいう話があるが、全く的外れもはなはだしい。僕も若いころは野戦系の病院で勤務していたから、かなり救急患者は多かった。そこにモンスターペイシェントが多かったことは否定しないし、連日のマスコミ報道でアホらしいと思っていたことは確かである。しかし自分の経験からも、他の医師に聞いても、この分野から離れていく一番の原因は違うことがわかる(もちろん関係しているが)。

救急というのは最も生死がからむ現場であり、どんなに最善の医療を施しても必ず何割かの患者は命を落とす。そしてそこで助からなかったり後遺症が出るような状況になる場合、今は必ず「訴訟」という言葉が出てくる。はっきりいってこのことを医師の大半は嫌がって、この分野から遠ざかっていると断言してよい。明らかなミスなど何もないのに、という点が重要なのである。つまりどの分野より不確実であるにもかかわらず、何割かの確率でいつも救急医は訴えられる危険を抱えている、それがあまりにバカらしいと考えているのだ(まあ理系らしい思考法だろう)。そして医療的に最善を尽くしても、恨み訴えるという家族側の行為そのものが、世界中の救急医療を崩壊させている。語弊を恐れず、救急医療が崩壊し国民が医療の恩恵を被れなくなるのは、あえて国民の自業自得と断言したい。

だからどんなに医師が増えても絶対無駄なのである。その医者達で救急医を目指す者などまずいない。たらい回しにしてもそうであり、なぜあそこまでして断るのか。専門外だからなんてのが、逃げ口上なのは内部でも知っているのだ。そもそも夜の病院なんてほとんどが若手医師しかいなくて専門なんてものは存在しないし、それより十何件目で打診があった時、良心から受診を受け入れてしまうと、ただでさえ危ない患者さんである上に、良心で受けたその病院が恨まれ(断った病院ではなく)、訴えられる対象になるから断るのである。なんでそんな理不尽な境遇でやる必要があるのか、すべての医師がそう思っているし、全てにおいて施されることが当たり前としか思っていない国民など滅びるべき、「医療崩壊」はそう述べているのだ。

ついでにいえば神の手を持つ医師とかいって、テレビで紹介される医師たちが数人いる。別に彼らが悪いわけではないが、その紹介の仕方は全くもってふざけている。彼らは最初から神の手と紹介されて、それをたどって患者が来るわけだから、もし万が一手術に失敗しても、あの先生がダメならと受け入れられる。しかもその全員は予定手術で自分の専門の最も細かいところだけに長けた医師たちなのだ。そんなものは神の手なんて言わない。医師以外の職人の世界なら、そんな人間はごまんといるのだ。

どうか皆さん救急医をもっと評価してあげてほしい、批判するなら私などを批判するのがちょうどよい。彼らは医師の花形であり、最も医療的な仕事をこなしている人たちなのである。医師などを増やすのでも給与を増やすのでもない(別に彼らはそこまで欲しがっていない)、彼らを救い、システムを救う方法は別にきちんと存在するのだ。あとはそれをやるかやらないかだけなのである。

最後におまけだが、アメリカでは高額医療訴訟が多発している背景もあって、医師が医療から撤退するケースが散見される。過激派によって医師の暗殺、病院を爆破するテロなども起きることがあり、病院が無くなることもある。出産難民は特に深刻で、フロリダ州では州全体で産科医がほぼ皆無という状況となっている。(by wikipedia)日本も間違いなくこうなり、それを止めることは現状では絶対に不可能だと断言してよい。

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No title

最善を尽くしても訴えられる救急医
精神科医の尻拭いをさせられる救急医

それに対して、
最悪を尽くしても訴えられない精神科医
救急医に丸投げできる精神科医

薄給で日夜働いても税金をむしりとられる国民
精神科医のお墨付きをもらい、パチンコ三昧の生活保護受給者

インセンティブがおかしな方向に働いていますよね
精神科医とその配下にとって住みよい世界ですこと

言いたい事を言ってくださいました!

明確に言って頂き嬉しく思います。
是非多くの人に知って頂きたいです!

No title

10:16さんのいわれるとおりだね。

No title

話が違ってすみません!
精神救急というのは恐ろしいところです。すぐ入院させられます。
注射されます。閉鎖にほりこまれます。法的手続きなんて踏んでくれません。
電気されます。あらゆる主張が封殺されるんです。

私も救急で働いたことがありますが、本当に怖いところだと思います。
患者サンを診ること以上に、家族への配慮という名の訴訟逃れの時間の方が大切になります。
命を預かるという責任の重さだけでも相当なのに!!
医療従事者という道を選んだ人の中に、知識や技術の差はあれど、患者サンを故意に悪くしようと考える人なんていないと思います。
今は救急だけでなく、どんな医療機関でもその傾向が強く、いかに責任を回避するか考えてばかりのような気がします。
だから、肝心の治療が滞るぐらい、書類ばかり増えます。

追記です..

病気も怪我も、医療者が起こしているわけじゃないです。治らない時もたくさんあります。そんなとき、いつも申し訳なく思っています。

私は看護師だから、医療者目線での考え方しかできなくなっているのでしょうか??
もしそうだとしたら、それはそれで悲しいと思いました。

No title

患者側としても、なんでも与えられて当然としか考えられなくなっている。
それについては間違いないと思いますよ。
看護師さんご苦労様です。

> 医療従事者という道を選んだ人の中に、患者サンを故意に悪くしようと考える人なんていないと思います。

精神医療従事者以外にはいないと思います。

救命救急医を患者家族の訴訟から守る法律や正しい裁判が行なわれて欲しいです。マスコミの報道からも守って欲しいです。

激しく同感します。
勿論医療者と協力して良くして行こうとする患者さんもみえますが、…感情的になるのは人として理解出来ますが、おんぶにだっこ、アドバイスは聴かないのに治らないと訴える方を多く見て来ました。(中にはお医者様だぞ!と酷く酷く横柄な方も未だに居ますが)

いつ訴えられてもおかしくないと常に考えながら働いていました。

本当に全体意識が変わらないと。。

別件ですが、精神科に入院したら簡単に生活保護を申請出来るのが不思議…。(まぁ、医療費はちゃんと公費から入るし家族は他人になれる良い機会の様ですが…)
プロフィール

キチガイ医

Author:キチガイ医
平成25年4月よりTokyo DDCとNPO法人薬害研究センターを設立、平成28年1月からはうつ民のセレクトショップや無料メルマガもやってます(詳しくはリンクをご覧ください)。薬の減薬や断薬、支援施設運営や、執筆や啓蒙活動を通して、自分の素人的意見を発信していければと思います。当ブログはリンクフリーですが、リンクするときは一声おかけください。

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